星の瞳のシルエット|切なさとやさしさに包まれる、おやすみ前の恋の物語

2025年9月19日

夜、ふと静かな時間が訪れたときに、

懐かしい恋の物語を読みたくなることはありませんか?

80年代の名作少女漫画『星の瞳のシルエット』(柊あおい)は、まさにそんな“夜の読書時間”にぴったりの作品です。

派手な展開や刺激的な恋ではなく、手の届かない想いと、まっすぐな優しさでできた物語

ページをめくるたびに胸がきゅっとなるのに、読後は不思議と温かく、穏やかな気持ちに包まれます。

■「星が導く恋」——少女漫画の原点のような物語

物語の主人公は、高校生の香澄。

彼女が中学生のころにもらった“星のかけら”のペンダントから、物語は静かに動き始めます。

それは、名前も知らない男の子からもらったもの。

だけど香澄はずっとその星を大切にしていて、「もう一度、彼に会える気がする」と信じているのです。

やがて高校生になった香澄は、親友の真理子と同じ演劇部に入り、そこで出会った久住くんに少しずつ惹かれていきます。

でも、実は彼こそが——

あの“星のペンダント”の男の子。

それを知っているのは香澄だけ。

真理子も久住に惹かれていて、三人の気持ちは静かにすれ違い始めます。

まるで星の軌道のように、少しずつ、でも確実に心が交差していく。

その繊細な感情の描写が、この作品の最大の魅力です。

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星の瞳のシルエット

切なさとやさしさに包まれる

■ 夜に読むと心が静かになる理由

『星の瞳のシルエット』は、まるで“夜のための漫画”のような作品です。

絵もセリフもやさしく、読むたびに心が落ち着いていきます。

恋愛ものではあるけれど、ドロドロした展開や刺激的なシーンは一切なし。

静かな心の揺れが、丁寧に、詩のように描かれています。

寝る前にこの漫画を読むと、まるで中学生のころに戻ったような気持ちになるんです。

「好きって、こんなにまっすぐで切ないものだったな」

そんな感情が胸の奥から静かに蘇ります。

夜、部屋の灯りを落として、柔らかい照明の中でページをめくる。

香澄のモノローグが、まるで自分の心の声のように響いてきて、気づけば心の中がやさしさで満たされています。

■ “友情と恋”の間にある、言葉にならない想い

香澄と真理子の関係は、恋の物語以上に繊細で、多くの読者が“共感と痛み”を覚えた部分でもあります。

お互いに大切な友達なのに、同じ人を好きになってしまう。

「どうしても譲れない気持ち」と、「友達を失いたくない気持ち」の間で揺れる二人。

その心の揺れ方が本当にリアルで、読んでいる側の胸にもそっと沁みてきます。

寝る前にこの物語を読むと、“過去の自分の記憶”を優しく撫でるような感覚になります。

あのころ抱えていた小さな悩みや後悔を、そっと許せる気がするんです。

■ 柊あおい先生の“やさしさ”が詰まった世界

『星の瞳のシルエット』の作者・柊あおい先生といえば、『耳をすませば』の原作でも知られる方。

彼女の作品にはいつも、「言葉にできない想い」と「やさしい余白」があります。

誰かを強く傷つけたり、ドラマチックに愛を語ったりしない。静かに、でも確かに心に残る“ぬくもり”があるんです。

絵のトーンもふんわりとしていて、まるで淡い光に包まれているような雰囲気。その柔らかさが、夜の読書時間にぴったりなんです。

名言セレクション

「あの星のように、いつかもう一度会える気がする。」

「人を好きになるって、苦しいけど、すごくきれいなことなんだね。」

「友情と恋、どっちも大切だからこそ、言葉にできない。」

夜の静かな時間に読むと、これらの言葉が心にじんわり響く。

■ 眠る前に読みたい、“やさしい懐かしさ”

現代の漫画にはない、ゆっくりとした時間の流れが『星の瞳のシルエット』にはあります。

スマホもSNSもない時代。

誰かのことを考えては、ただ手紙を書いて待つ。

そんな純粋な恋愛模様が、逆に新鮮に感じられます。

おやすみ前にこの漫画を読むと、一日の終わりに心が整っていくような気持ちになります。

“想いを大切にすることの美しさ”を思い出させてくれるからです。

■ 切ないのに、やさしい。だから夜に合う。

『星の瞳のシルエット』は、ただの恋愛漫画ではなく、“心を浄化する物語”です。

眠る前の10分、静かにページを開いて、香澄のモノローグを追うだけで、忙しい現実からふっと離れられる。

そして最後のページを閉じたとき、「今日も悪くなかったな」と思える。

そんな、“やさしい夜”を過ごしたいときにこそ読みたい一冊です。